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食べるべきものによって歯の形状と歯列は異なります

われわれヒトは雑食性で、食物を噛み切り、砕き、すりつぶすという食生活に最適な歯の形状と歯列、そして消化器系を有しています。同様に、ベジタリアンである草食獣の典型例である馬や牛は、ヒトとは異なる歯の形状と歯列となっています。
草食獣の歯列は、草を引っ張ったり、噛み切ったりするための前歯と、まるでハーモニカの吹き口のようにズラリと並んだフラットな臼歯だけで構成されています。この臼歯という歯は、その文字通り、臼のように食物をすりつぶすことに最適な形状をしています。


臼歯自体は、肉食獣である犬やオオカミ、そして猫にもあります。ただし、肉食獣の臼歯は、軟骨や骨を噛み砕いて食べるのが目的のため、雑食性のそれと似た形状の臼歯と、前臼歯や裂肉歯と呼ばれる中央部がわずかにとがった異なる形状の組合せからなっています。

百獣の王の名にふさわしい感のあるライオンの頭骨。その鋭い牙には畏怖の念さえ抱かせる迫力があります。
子猫ではありますが肉食獣ならでは猫の歯。人や草食獣のそれに似た臼歯が非常に少ないことがわかります。


さらに、肉食獣を草食獣と明らかにわけているのは、ひと目でそれとわかる鋭利な牙のような犬歯の存在です。ライオンやトラ、身近な猫といった猫科は肉食動物で、歯の大きさはまるで違いますが、種類と歯列/数は、まったく同じで30本あります。オオカミも肉食動物です。幼獣の頃の歯は永久歯に一度だけ生え変わります。


草食動物である、牛の場合、上アゴには前歯がありません。その代わり歯ぐきの部分が硬く、歯床板と呼ばれ、前歯の役割を果たしています。下アゴには切歯があり、切歯とほぼ同じ形をしている犬歯もあります。一方の馬の歯はというと、切歯と呼ばれる前歯と臼歯で構成されていて、退化しているもののオスには犬歯もあります。牛と馬の歯で共通する点は、草をすりつぶして食べることから臼歯が発達していて、すり減るために長期間にわたって生え続けます。

上アゴに前歯がないことがよくわかる牛の頭骨。前歯はあるものの、臼歯が草食に最適な形状に発達している馬の頭骨。とがった犬歯があるのはオス馬である証拠。

さて、では犬の場合は、どうなのでしょう。犬の場合、切歯、犬歯、前後の臼歯が計42本あります。犬の祖先はオオカミです。つまりもともとは肉食獣でした。しかしオオカミと別れてヒトと共生するようになり、そして長い時間をかけて多数の犬種に改良されてきたこともあり、中には歯の数が42本に満たないものもあります。
犬はヒトの残りものを食べ、ヒトと共生する道を歩んできたことから、肉食動物とは言えないほど、ありとあらゆる食物を食べるようになりました。


しかし、犬とオオカミには、裂肉歯という大きな肉を切り裂くための特殊な構造の巨大な奥歯があるという共通点が残っています。これは歯学的には前臼歯に数えられるようですが、いずれにせよ肉食動物だけがもつ強力な歯です。そんな歯があるとなると、肉以外のものも食べるようにはなったものの、基本的には肉食動物の特徴を色濃く残していることも考えられます。そこで次に消化器系を見てみることにしましょう。

オオカミの頭骨。犬ととてもよく似ていることが見て取れます。犬の歯列模型。臼歯の部分にあるとがった形状の裂肉歯に注目。大きな肉を切り裂き、骨を砕く、オオカミと共通する強力な歯です。

腸の長さも違います

消化器系には、消化する部分だけでなく栄養を吸収する部分も含まれます。消化機能を主に担う胃に関して、身近な草食動物の中で最もユニークなのが牛で、第1から第4までの四つの胃があります。この中でヒトと同じ機能をもつのは第4胃で、第1から3までは、一度食べた草を反芻するための胃です。馬の場合、ヒトや肉食動物と同じで胃は一つしかありません。


草食、肉食、そして雑食の動物の消化器系における大きな違いは、腸の長さです。一言で言えば、腸の長さは草食系のほうがより長く、肉食の場合は短くなります。それぞれの腸の長さと体長との倍率を比較してみました。



*ヒトの体長は、他の動物と同様に四つん這いになった姿勢をとった際の口から肛門までの長さを元に試算されたものです。人の腸の長さは体長の3~5倍という説は、頭頂部からかかとまでの身長を元に試算された数値であり、それでは、他の動物たちとの比較対象にならないため、口から肛門までの長さを採用しています。


上記の数字で明白なことは、犬は他の肉食獣に比べて腸が少し長いという事実です。そして、ヒトほどの雑食性、もしくは消化能力を有しているとまでは言えないということです。腸の長さが体長の4倍というのが動物学における肉食と雑食を分ける線引きの目安となっているようですが、犬はヒトに比べれば、その半分しかありません。


犬のルーツはオオカミであり、1万5千年から2万年とも言われる長いヒトとの共生により、言いかえれば自ら獲物を狩るのではなく与えられたものを食するという食生活の変化の結果によって、腸が少しは長くなりました。けれども、だからと言ってヒトと同じレベルの雑食性を有するまでには至っていない、といえます。

犬、猫にとって最善の「食」とは?

こういった事実がブッチの考える犬や猫にとって最善の食は何か、というコンセプトの基本となっています。犬の腸は、ヒトとの長い共生の歴史の中、長くはなりましたが、それでも体長比ではヒトの半分ほどしかありません。また、歯の形状等はオオカミのそれに酷似しています。さらに、多数の犬種が生まれた結果、歯の数が少なくなった種もいます。それでも、オオカミとの共通点である犬歯と裂肉歯は備わったままです。つまり基本はあくまで肉食獣なのです。


さて、ここで犬や猫にとって最善の食餌について、もう一歩踏み込んで考えてみましょう。基本が肉食獣である以上、猫はもちろんのこと、犬も肉を好みます。では彼らが好むのは、人と同じように赤身の筋肉だけでしょうか。答は否、ノーです。ヒトとの長い共生の歴史はあれども、両者とも赤身の筋肉と同じか、それ以上に内蔵を好みます。その理由は、本能的なものであり、栄養バランスに優れていることを身をもって知っているからだと考えられます。


自然界のオオカミや猫科の野生動物の生態観察においても、このことはよく知られた事実です。オオカミやコヨーテ、ディンゴ等の犬科の動物、そしてライオンやトラ、ジャガーやピューマ等も、筋肉より先に内蔵を食べます。確かに赤身の筋肉はタンパク源としては優れていますが、それだけでは補えない栄養素を内蔵から得ることができることを彼らは本能的に知っているのです。


では犬や猫には主として穀物等から得られやすい炭水化物は必要ないのでしょうか? もちろん、炭水化物自体は栄養素として必須な成分です。しかし彼らはやはりヒトとは異なります。犬は腸と体長比の数値から見ても、穀類等を消化する能力が肉食獣より少し優れています。そして、猫の穀物類の消化能力は犬よりも劣ります。その代わりに、彼らに肉から必須栄養素を体内で造り出す機能を有しています。それを可能にしているのは、基本が肉食獣であるがゆえのヒトとは異なる体内酵素の存在であったりします。


ヒトと共通して言えることは、それぞれにとって最適なバランスの食は異なるということだけです。
ブッチは、この点にも着目し、犬や猫たちにとって最適なバランスのとれた栄養食は何かを考え、半世紀近い経験の中から得たノウハウを製品作りに反映させ続 けてきました。それが、内蔵も含めた肉を基本にしながら、少量のシリアルや海草であるケルプを配合するという栄養構成です。
人工的に作りだした「飼料」ではない、本来あるべき状態の肉のフードを犬・猫たちに与えたい、それがブッチの基本です。

このことは、ニュージーランドの働く牧羊犬たちやペットに至るまでの健康の維持と、怪我や病気からの回復にも効果を発揮してきたことを誇りにしています。食 べ物の消化吸収にかかる身体への負担を最小限にすることができれば、残る体力は、健康の維持や回復に使われることとなります。ブッチは、創業以来半世紀近 くにもなる歴史に裏打ちされた実績により、このきわめてシンプルな事実を実証してきているのです。